日々東北現代|ARTICLE

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福島の地酒を、少し考えてみた。

三つの地域と、県独自の酒米から見えてくる福島の酒

福島の地図を眺めていると、会津、中通り、浜通りという三つの地域が目に入ります。

県土の広い福島では、それぞれの地域で気候や風土、食文化も少しずつ違います。日本酒についても、ひとつの「福島の酒」として見るだけではなく、地域の広がりから眺めてみると、また違った見え方があります。

令和6酒造年度に、福島県内で実際に清酒を製造した場数は54場。今回の6県の中では最も多い数字ですが、数だけを見ていると、その先にある酒造りの違いまでは見えてきません。

会津、中通り、浜通りという三つの地域

福島県は、会津・中通り・浜通りの三つの地域に分けて語られることがあります。

県の資料でも、会津は日本海側の寒冷な気候、浜通りは海洋性の温暖な気候を持ち、中通りを含め、それぞれの地域で異なる暮らしや食文化が育まれてきたとされています。酒蔵の名前を見ても、その広がりが少し分かります。

会津若松市の宮泉銘醸や末廣酒造、会津坂下町の廣木酒造本店。

中通りには二本松市の大七酒造、郡山市の金寶酒造や豊國酒造。

浜通りにも酒造りを続けている蔵があります。

元の原稿では、それぞれを「重厚」「香り高い」「軽快」といった味の違いで表現していました。もちろん、酒には蔵ごとの違いがあります。

だからこそ、地域だけで味を決めつけるよりも、「この広い県の中に、これだけ酒蔵がある」と眺めてみるほうが、今の福島には合っている気がします。

「福乃香」という福島の酒米

もうひとつ、福島の酒造りを考えるときに気になるのが、県オリジナル酒米の「福乃香」です。

福乃香は、2004年に「静系酒88号」と「山形酒86号」を交配し、その後、生産者や蔵元の協力を得ながら酒質などの確認を重ね、15年かけて育成された品種です。2019年に「福乃香」と名付けられ、県の奨励品種として採用されました。

酒造りでは、心白が入りやすく大きいことや、高い精米にしたときに醸造時に溶けやすいことなどが特徴として紹介されています。そして、福乃香が生まれた背景には、「福島の米、福島の水、福島の蔵人」で酒をつくるという考えもありました。酒米の名前を追っていると、日本酒は蔵の中だけで完結するものではないことに気づきます。

田んぼで米を育てる人がいて、その米を酒にする人がいる。その間に、長い時間をかけた品種開発もある。

福島の地酒を見るとき、「どんな味か」だけではなく、「どんな米からつくられているのか」と考えてみるのも面白そうです。

伝統の先に、まだ続いている酒造り

福島の酒について調べていると、昔から続いてきた蔵の名前と、比較的新しい酒造りの動きが同じ県の中にあります。

寫楽、大七、末廣、飛露喜、一歩己、夢心、南会津 男山。

それぞれの名前を眺めているだけでも、福島の酒造りがひとつの方向だけを向いているわけではないことが分かります。生酛を続ける蔵もあれば、新しい酒造りに取り組む蔵もある。

県独自の酒米を育てる動きもある。そして、会津・中通り・浜通りという地域の違いもある。

「伝統か、革新か」と分けてしまうより、その両方が同じ土地で続いていることを眺めてみたい。

福島の地酒を調べていると、そんなことを考えます。一杯の酒を前にしたとき、その背景にある地域や米のことまで全部知っている必要はないのだと思います。

ただ、ラベルに書かれた地名や酒米の名前が、少し気になる。そのくらいのところから眺めてみると、福島の地酒は、まだ知らない土地の話へつながっていくような気がします。

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