広い県土で進む岩手県の人口減少 暮らしを支える「距離」の問題
岩手県の人口は、2015年の約128万人から、2020年には約121万人となりました。5年間で約6万9千人、割合にして約5.4%の減少です。人口減少の割合は青森県と同程度ですが、岩手県では、人口が減ることに加えて、広い県土に集落や生活拠点が分散していることが大きな課題となっています。
若い世代の転出が人口構造を変える
岩手県でも、進学や就職の時期にあたる10代後半から20代の転出が目立ちます。県内から盛岡市へ移る人に加え、仙台市や首都圏へ移る人も少なくありません。特に専門的な教育や職業を希望する若者ほど、県外へ選択肢を求める傾向があります。若者の県外流出が続けば、働く世代が減少します。さらに、結婚や出産の中心となる世代が減ることで、出生数も減少します。若者の転出と出生数の減少は別々の問題ではなく、互いに影響し合っています。
人口密度の低さがサービス維持を難しくする
岩手県の特徴は、北海道に次いで広い県土です。
人口が減少しても、道路、上下水道、学校、医療、消防、公共交通などは、広い範囲で維持しなければなりません。住民一人あたりで支える面積が広くなれば、行政やインフラの負担は大きくなります。路線バスの利用者が減ったからといって、単純に廃止すれば、高齢者や運転免許を持たない人の移動手段が失われます。医療機関が集約されれば、通院に長い時間を要する地域も出てきます。人口減少が「距離の問題」として現れやすいことが、岩手県の特徴です。
盛岡市への集中だけで解決するのか
県内では、進学、就職、医療、買い物などの機能が盛岡市へ集中する傾向があります。
一定の都市機能を集約することは、サービスを維持するうえで合理的です。しかし、すべてを一つの都市へ集めれば、沿岸部や県北、県南の生活拠点が弱くなる可能性があります。
必要なのは、盛岡市への一極集中だけではありません。
地域ごとに生活を支える小さな拠点をつくり、医療、買い物、交通、行政などを連携させる考え方が重要になります。
遠隔診療、移動販売、予約型交通、オンライン行政なども、人口が分散する岩手県では特に重要な仕組みです。
復興の先にある長期的な地域づくり
沿岸部では、東日本大震災後の復興事業によって住宅や道路、防潮堤などの整備が進みました。一方で、復興事業が一段落した後、地域の人口や産業をどのように維持するかという新しい課題もあります。新しく整備された施設や市街地を将来にわたって使い続けるには、人口規模に合わせた運営方法を考えなければなりません。
岩手県の人口減少を考えるとき、人数だけを見るのでは不十分です。広い県土の中で、どこに暮らしの拠点を残し、拠点同士をどう結ぶのか。人口が減っても孤立しない地域をつくることが、これからの重要なテーマになります。