日々東北現代|ARTICLE

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岩手県の就業者数、産業ごとの10年を眺める

いつも通る道の工事が終わると、そこに何があったのか、案外早く思い出せなくなることがあります。完成した道路や建物は日常に残っても、つくっていた人の姿は、同じ場所には残りません。

一方で、店や病院のように、毎日の暮らしの中で人が働き続ける場所もあります。

岩手県の就業者数を10年分並べると、そうした仕事の時間の違いが気になってきます。2010年、2015年、2020年。最初と最後に加えて、真ん中の数字からも、岩手の仕事の変化をたどってみます。

岩手で働く人の数を、産業ごとに並べる

ここで数えているのは、岩手県に住む15歳以上の就業者です。会社員だけでなく、自営業者なども含みます。県内の職場で働く人を、勤務地で数えた統計とは異なります。

単位:人。増減は2020年−2010年。

産業2010年2015年2020年10年間の増減
総数631,303636,329605,093−26,210
農業,林業68,98862,87353,420−15,568
漁業7,0154,8584,506−2,509
鉱業,採石業,砂利採取業566619574+8
建設業55,17064,25656,089+919
製造業97,74394,76590,556−7,187
電気・ガス・熱供給・水道業2,9853,0363,017+32
情報通信業6,6086,7086,558−50
運輸業,郵便業31,43430,88229,764−1,670
卸売業,小売業100,51595,27389,421−11,094
金融業,保険業12,39611,55610,684−1,712
不動産業,物品賃貸業6,6577,8257,766+1,109
学術研究,専門・技術サービス業12,22214,03412,814+592
宿泊業,飲食サービス業34,06332,86230,016−4,047
生活関連サービス業,娯楽業23,29121,32419,628−3,663
教育,学習支援業27,42327,03627,526+103
医療,福祉71,35481,20285,211+13,857
複合サービス事業7,5378,9587,942+405
サービス業(他に分類されないもの)31,46433,53133,839+2,375
公務(他に分類されるものを除く)25,21826,07925,109−109
分類不能の産業8,6548,65210,653+1,999

出典:総務省統計局「国勢調査」時系列データ・第5表。男女計、通常の集計値を使用し、不詳補完値は含めていません。統計表

岩手県の就業者総数は、2010年の631,303人から2020年の605,093人へ。10年間で26,210人、約4.2%減っています。

ところが、2015年には636,329人。2010年より5,026人増えています。10年間の結果は減少でも、今回の3時点では、人数がいったん増えた年を挟んでいます。

「働く人が減り続けた10年」と読むと、この途中の動きが抜け落ちてしまいます。

2015年の増加は、どんな仕事に表れているのか

2010年から2015年にかけて、「建設業」は55,170人から64,256人へ、9,086人増えています。「医療,福祉」も71,354人から81,202人へ、9,848人増えました。

この二つの増加を合わせると18,934人。県全体の増加5,026人を上回ります。その間に、農業・林業や製造業、卸売・小売などでは人数が減っているためです。

2015年の総数の増加は、どの産業にも一様に広がった動きではありません。増えた仕事と減った仕事が、同じ5年間に重なっています。

建設業については、東日本大震災津波からの復旧・復興が進んでいた時期と重なることも、背景を考える手がかりになります。岩手県も当時、復興状況を複数の統計から継続して確認していました。ただし、今回の就業者数だけで、9,086人の増加のうち何人が復興に関わっていたかまでは分かりません。

道路や住宅をつくる仕事が増える時期と、日々の暮らしを支える仕事が増える時期。県全体の人数が同じ方向へ動いていても、その背景や役割まで同じとは限らなさそうです。

建設業と医療・福祉、2015年の先で分かれた動き

2015年から2020年になると、「建設業」は64,256人から56,089人へ、8,167人減っています。一方、「医療,福祉」は81,202人から85,211人へ、さらに4,009人増えました。

前半の5年間にはどちらも増えていた二つの産業が、後半には異なる方向へ動いています。

建設業の10年間の増減だけを見ると、919人の増加です。その小さなプラスの途中には、9,086人増え、その後8,167人減った動きがあります。2010年と2020年の人数が近いことを、そのまま「ほとんど変わらなかった」と読むのは難しそうです。

建物が完成しても、その場所での暮らしは続きます。仕事の中には、ある時期に大きく必要とされるものも、毎日の生活に繰り返し関わるものもあります。もちろん、建設にも維持や修繕の仕事があり、医療・福祉にも施設整備などの変化があります。二つを単純に分けることはできません。

それでも、人数の増減を「仕事が増えた、減った」だけで受け止めるより、その仕事が地域のどんな時間を支えているのかまで考えると、2015年を挟んだ動きの見方が少し変わります。

製造業が最多になったことを、どう受け取るか

2020年に最も就業者数が多かったのは「製造業」で、90,556人でした。「卸売業,小売業」が89,421人、「医療,福祉」が85,211人と続きます。

2010年と2015年には卸売・小売が最多でしたが、2020年には製造業が1,135人上回っています。

ただ、製造業は10年間で7,187人減っています。卸売・小売の減少が11,094人と、それより大きかったことで、順位が入れ替わりました。

「製造業が1位になった」と聞くと、工場で働く人が増えた姿を思い浮かべるかもしれません。けれど、この3時点の数字が示しているのは、両方の人数が減る中での順位の変化です。

地域の産業を「何が強いか」という順番で見ることはあります。そのとき、順位と人数の動きを一緒に読むと、最多という言葉だけでは見えない変化も残ります。就業者数の順位は、産業の売上や生産量の順位でもありません。

岩手の仕事の風景は、製造業だけでできているわけでも、建設業の動きだけで説明できるわけでもありません。農業・林業は10年間で15,568人減り、医療・福祉は13,857人増えています。異なる時間の動きが、ひとつの県の表に並んでいます。

いま見える10年と、その先

今回の最新時点は、2020年10月の国勢調査です。新型コロナウイルスの流行期に当たりますが、10年間の変化をその影響だけで説明することはできません。

※「分類不能の産業」は産業を特定できなかった就業者です。その人数の変化も、産業別の比較に関わります。

2025年にも国勢調査は実施されており、産業別就業者数を含む「就業状態等基本集計」は2027年3月までに公表される予定。新しい数字が出たら、今回の3時点と合わせて、岩手で働く人の変化をまた眺めてみたいと思います。

今回は、2010年、2015年、2020年の3時点まで。

岩手の10年をたどると、総数の減少とともに、途中で増えた働き手や、増加が続いた仕事の姿も見えてきます。地域の仕事を考えるには、最初と最後の人数だけでなく、その間にどんな役割が求められていたのかという視点もありそうです。

ただ、県全体の表には、沿岸や内陸、それぞれの町で起きた違いまでは表れていません。県の数字と、身近な仕事場で感じる変化が、ぴたりと重ならないこともあるでしょう。

工事が終わった道、働く人が出入りする工場、毎日開く店。地域に残ったものと、その場所で続いている仕事。身近な風景から振り返ると、この3つの年の間にある時間も、少し見えてくるのかもしれません。

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