日々東北現代|ARTICLE

日々東北現代|ARTICLE

白いマイクスタンド編①「ギギッ……。」

1975年、ソロ活動開始。そこから映像を遡り、私が白いマイクスタンドを確認できるのは1977年、日本武道館スーパーライブあたりだろうか。

ちなみに、この時点で私はまだ産まれていない。

つまり私は、自分がこの世に存在する以前から使われていた一本の白い棒について、これから真面目に考えようとしている。

80年代に入ると、ライブパフォーマンスも激しくなる。振る。回す。蹴る。当然、マイクスタンドもただ歌うためだけの道具ではない。ご本人の楽器であり相棒ともおっしゃっている。

そう。ステージの上では彼によってマイクスタンドに生命が宿り、マイクを掴む、回す、このアクションから放つ音はノイズではなく、ビートになるんだ。

華麗なマイクターンの裏側で、当時はライブ中にマイクスタンドが曲がってしまうこともあり、コンサートツアーには何本ものスペアが用意されていたという。彼のステージの為に役目を終えた、スタンドは英霊となる。

ただ、白ければ何でもいいわけではない。あれだけ振り回され、回され、ときには身体ごと預けられる。マイクスタンド側からしてみれば、なかなか過酷な職場である。

そして90年代中旬だったと思う。インタビューの中でマイクスタンドの素材について、「バイクのレーシングフレームと同じ」という趣旨の話をしていた記憶がある。

何の素材だったのだろう。アルミ系なのか。あるいは、いわゆるジュラルミン系の合金なのか。

この辺りから、一本の白い棒をめぐる素材への興味まで始まってしまう。

さらに1997年。「YES,E」の年だった。スポーツ新聞に「マイクスタンド、今年はチタン!」そんなキャッチがあったことを今でも覚えている。

今年“は”チタン。

ということは、それまでは何だったのか。そして、なぜチタンにしたのか。軽さなのか。強度なのか。80年代のように曲がってしまうマイクスタンドへの対策だったのか。

残念ながら当時の新聞を手元に保管しているわけではないので、これはあくまで私の記憶である。

ただ、白いマイクスタンドの素材が気になり始めるには十分だった。

それまで素材以外の形状は、比較的一般的な一本物のストレートマイクスタンドだった。

大きな変化を確認できるのは2006年、「NEW STANDARD ~ROCK OPERA 2」。

三本脚の形状が変わった。

ここから現在につながる、あの独特な三本脚のスタイルになっていく。

ツアー序盤には、現在のデザインより脚そのものに厚みがあり、表面にトライバル柄の入ったモデルもあった。当時オフィシャルショップで展示されていたものを見た記憶がある。

あの仕様をライブでは見たことがない。ちなみに現在まで、この三本脚タイプだけですべてを賄っているわけではないようだ。花道上でマイクスタンドを使用する演出などでは、よりシンプルな三本脚タイプも確認できる。用途によって使い分けているように見える。

ここで少し話は逸れる。当時、身長は180cmと認識していた。ファンではない人に話すと「そんなに大きいの?」と驚かれることがある。

ステージでは軽々とマイクスタンドを扱うので、こちらもその大きさや重さを忘れてしまう。しかし展示されている実物を見ると印象が変わる。

思った以上に大きい。そして、思った以上に重い。

171cmの私には、だいぶ高さがある。

なるほど。180cmという身体で、あれを振り回しているのだ。

映像では簡単そうに見えるが、実物を前にすると、マイクターンというものの見え方も少し変わってくる。

ライブで汗だくになり、歯を食いしばり、顔を歪めながら全力でマイクを回す。対談インタビュー映像で背中から出血した時もあったと言う。

私は、あの全力感の瞬間が萌える。

話を戻す。私が素材についてもう一度気になったのが2009年だった。自社レーベルを立ち上げ、前年にはキャリアで初めてコンサートツアーを行わなかった。その翌年、「ROCK’N’ROLL」。

一発目は東京ドームだった。

その少し前、NHK「SONGS」で1985年リリースの「TAKE IT TIME」を歌う姿を見ていて、妙な違和感があった。

マイクスタンド、曲がってないか?

東京ドームでも同じように見えた。勘違いなのか。仕様が変わったのか。年齢を重ねる中で、パフォーマンスを考えて軽量化したのか。だとすれば、あの時の素材は何だったのだろう。

そんな疑問を持ったまま迎えた2011年。

「STILL ROCKIN’ ~走り抜けて・・・」仙台公演。

MC中だった。曲がったマイクスタンドをご本人が足で踏んで固定し、その場で戻そうとした。

会場は静まり返っている。

その中で、

ギギッ……。

鈍い音がした。

今でも妙に耳に残っている。

チタンなら、あんなふうに曲がるのだろうか。それとも2009年頃から、また別の素材に変わっていたのか。アルミ系、あるいはジュラルミン系の合金だったのか。

もちろん、音を聞いただけで素材など分かるはずもない。

そもそも、マイクスタンドを見ながら素材を考えている客がどれだけいたのかも分からない。でも私は気になった。

1977年。80年代の曲がるマイクスタンド。レーシングフレームと同じ素材という記憶。1997年の「今年はチタン!」。2006年の三本脚。2009年の違和感。

そして2011年、仙台。

ギギッ……。

一本の白いマイクスタンドにも、どうやら歴史がある。

そして、この話はまだ終わらない。

むしろ私が本当に気になり始めるのは、ここから十年以上経った後のことである。

抜粋

自分が産まれる前から存在する一本の白い棒。曲がる、素材が変わる、脚が変わる。そして仙台で聞いた「ギギッ……」。白いマイクスタンドを真面目に追いかけてみる。

上部へスクロール