日々東北現代|ARTICLE

日々東北現代|ARTICLE

03|通路幅460mm。カシオペア10号車2番室を実測して見えた「空間の使い切り方」

10号車2番室を見ていて気になったのは、「実際にはどのくらいの大きさなのか」ということだった。列車の個室は、写真だけではサイズ感がつかみにくい。そこで今回は、滞在中に測れる範囲を実際に採寸してみた。

※以下の寸法は現地での実測値であり、車両の公式図面上の寸法ではありません。

室内高は約1,970mm。通路は約460mm

室内の高さは、実測でおよそ1,970mm。一般的な住宅の天井高と比べれば低いものの、立って過ごすことに大きな窮屈さを感じる高さではない。一方で、空間の考え方がはっきり表れるのが床面だ。

窓側に配置された座席・寝台の幅は約800mm。

その横に残される通路は約460mmだった。

800mmの寝台と460mmの通路。

数字にすると、限られた車幅の中で人が横になれる幅を確保し、その横に「歩くために必要な幅」だけを残していることがよく分かる。広い通路を設ける余裕はない。しかし、人が移動できなくなるほど削ってもいない。この460mmという寸法が、10号車2番室のミニマルさを象徴しているように感じた。

大きな窓が、数字以上の広さをつくる

窓は横方向がおよそ1,495mm、高さがおよそ745mm。床面積そのものは小さいが、壁のかなり大きな割合を窓が占めている。狭い室内で視線が壁に止まらず、そのまま車外へ抜ける。写真で見たとき以上に圧迫感が少ないのは、この窓の効果が大きい。限られた床面積を物理的に広げることはできなくても、「視線の奥行き」はつくることができる。

住宅や小規模店舗にも通じる、小空間の基本的な考え方だと思う。

795mm×650mmの中にも、役割を重ねる

反対側の端部には、実測で幅約795mm、奥行き約650mmのスペースがある。

ここにも座席が置かれ、その上部には棚が設けられている。座面付近から棚の下面までは約830mm。
さらに棚から上部には約685mmの空間が残されている。床に収納家具を追加するのではなく、人が座る場所の上に収納を重ねる。横方向に広げられないなら、縦方向を使う。10号車2番室では、こうした判断が各所で見られる。

「座る」と「寝る」も、同じ場所を使う

昼間は座席として使われている部分も、就寝時には寝台へと展開される。一つの空間に「座席」と「ベッド」を別々に置くのではない。時間によって用途を切り替え、同じ面積に二つの機能を持たせる。

寝台を展開すれば床の余白はかなり小さくなる。しかし夜間に必要なのは、広い床ではなく横になれる場所だ。必要な機能を、必要な時間だけ使う。この割り切りがあるから、限られた面積の中でも2人分の滞在空間が成立している。

家具を置くのではなく、壁そのものを設備にする

入口側の木目壁には、クローゼット、鏡、操作盤、収納などがまとめられている。

室内に独立した家具を並べるのではなく、設備を壁の中へ集約する。窓下にも収納を設け、窓際のわずかな奥行きはカウンターとして利用する。空間の中に「何かを置く」のではなく、壁・窓下・座席上といった余白そのものに機能を与えている。

数字にすると、設計の意図が見えてくる

室内高約1,970mm。

寝台幅約800mm。

その横の通路約460mm。

窓幅約1,495mm。

端部のスペース約795×650mm。

一つひとつを見ると、決して余裕のある寸法ではない。それでも実際に室内にいると、「狭くて何もできない」とは感じなかった。必要な場所に、必要な寸法だけを配分しているからだと思う。広さを足すのではなく、用途を重ねる。家具を増やすのではなく、壁に組み込む。
そして最後に、人が動くための一本の通路を残す。カシオペア10号車2番室は、豪華寝台列車であると同時に、限られた空間をどう使い切るかを考え抜いた「小さな空間」の好例でもあった。

次回は、さらに小さな空間へ。トイレと洗面台を一つの場所に収めた水回りを、同じように実測して見ていく。

04|幅630mmの水回り。カシオペアのトイレ兼洗面台を実測する

上部へスクロール