酒米と酒造りの変化から、青森の地酒を考える
日本酒について詳しいわけではない。
ラベルを見て「これは辛口かな」と考えるくらいで、飲み比べをしても、違いをうまく説明できないこともある。それでも、青森の地酒を調べていると、少し気になることが出てくる。酒そのものだけではなく、その酒をつくるための米や、土地の名前まで、少しずつ変わっている。
数字を見てみると、青森県では2024酒造年度に、実際に清酒を製造した場が15場あった。以前の資料で見かける酒蔵数と比べると少なく感じるかもしれない。
ただ、ここには「免許を持っている製造場」と「その年度に実際に清酒を製造した場」という違いがある。数字は、単純に多いか少ないかを見るものでもないらしい。
酒米にも、少しずつ変化がある
青森県の酒米として知られてきた「華吹雪」「華想い」。
現在の青森県の奨励品種を見ると、2026年3月時点では「華吹雪BL」「華想いBL」が酒米として指定されている。
「BL」という名前だけを見ると、少し新しい品種に見える。実際には、これまでの「華吹雪」「華想い」の酒造特性を受け継ぎながら、いもち病への抵抗性を高めた品種として育成されたものだという。酒米も、昔からあるものをそのまま残すだけではない。
酒造りに使われる米にも、農業の側から少しずつ手が入っている。そう考えると、日本酒は「昔ながらのもの」というだけでは片づけにくい。
米をつくる人、酒をつくる人、それぞれのところで、今の事情に合わせた変化が続いている。
「青森」という名前が、酒の産地として加わった
もう一つ、最近の青森の地酒を考えるときに気になるのが、地理的表示、いわゆるGIの「青森」。
2025年6月、国税庁によって清酒のGI「青森」が指定された。GIは、ある地域でつくられる酒について、その産地に結びついた特性や原料・製法などを基準として定め、その地域の名称を保護する制度。つまり「青森」という名前が、単なる産地表示の一つではなく、一定の基準と結びついた酒の表示として加わったことになる。
これまでにも青森の酒には、それぞれの蔵や銘柄の名前があった。そこに今度は、「青森」という地域そのものの名前が加わった。
酒を飲むとき、ラベルに書かれた蔵の名前を見ることはあっても、そのさらに外側にある「産地の名前」まで意識することは、案外少ない。
同じ青森でも、酒のつくられ方は一つではない
青森県には、田酒、陸奥八仙、喜久泉、じょっぱりなど、さまざまな銘柄がある。
ただ、銘柄を並べて「この酒はこう、この酒はこう」と整理していくと、いつの間にか酒の説明だけで終わってしまう。むしろ気になるのは、それぞれの酒が生まれる背景の方かもしれない。
どんな米を使うのか。
どんな製法を選ぶのか。
どこでつくられているのか。
そして、その土地の名前をどこまで酒の個性として扱うのか。
同じ「青森の地酒」という言葉の中にも、いくつかの層がある。全部を知ってから飲む必要はないのだと思う。ラベルを見て、米の名前を見つけて、産地の表示に気づく。それだけでも、いつもの一杯が少し違って見えることがある。
青森の地酒について調べていると、そんな小さな変化が見えてくる。酒そのものだけでなく、米や制度、つくり手の仕事まで含めて眺めてみると、地酒という言葉の意味も少し広く感じられる。詳しく説明できなくても、気になったところから見ていく。
青森の酒については、そんな距離感でしばらく眺めていたい。