三の重

最後は、ご飯と東北の肉で締める。
最後の三の重には、寿司とご飯もの、そして東北を代表する肉料理が並ぶ。弁当の終盤になって、ようやく「食事」と呼びたくなる料理がまとまって現れる。

米沢牛しぐれ煮
山形を代表する米沢牛を、豪快なステーキではなく、しぐれ煮としてご飯に寄り添わせる。弁当らしい使い方が面白い。
米沢牛しぐれ煮の手まり寿司
牛とは違う豚の旨味と、ねぎ味噌の組み合わが米との相性が良い。


せり漬・蟹いくらご飯
蟹といくらという華やかな海産物に、せりの存在が加わる。三の重の中でも、見た目の主役にしやすい一品。
一品だけを取り出して、「この料理が特別においしい」と語る弁当ではないのかもしれない。それよりも、牛タン、鮭、帆立、長芋、ラ・フランス、米沢牛、佐助豚。
東北を連想させる食材を少しずつ重箱の中に置き、列車の中で土地を食べていく。カシオペアスペシャル弁当の面白さは、料理そのもの以上に、その“編集の仕方”にあるように思う。
そして、最後は「見送る側」へ
今回の体験ツアーを知ったとき、最初に感じたのは決して安くはないということだった。けれど、実際にカシオペアの中で時間を過ごし、客室のつくりを見て、食事を味わい、その歴史に触れていくうちに、その金額だけでは測れないものが少しずつ見えてきた。長い年月を走り、多くの人の旅の記憶を乗せてきたカシオペア。営業運転を終えたあとも、これほど多くの人に愛され続けている理由を、今回の体験を通して少しだけ理解できた気がする。そして最後、上野駅のホームからカシオペアを見送る時間がやってきた。
動かない車両を体験するところから始まった一日は、最後にカシオペアがホームを離れていく姿を見届けることで終わった。隣でその姿を見送る息子を見ながら、これは単に珍しい列車に乗った一日ではなかったのだと思った。一つの時代を走った列車と、それを大切にしてきた人たち。その最後の時間の一部に立ち会えたこと。
一見すると高価に思えたこの体験ツアーも、振り返れば、カシオペアという列車に積み重なった歴史と、人々の思い、そして愛され続けてきたそのエンディングを、自分たちの目で見届けるための時間だった。
最後のカシオペアを体験できたこと。
それ自体が、きっと何年経っても残る旅の記憶になる。

上野駅。最後の時間を見送る。
ライター:フランク・ミサオ